mosktch

2019年からズルズルと続けていたmotion sketchがようやく100に届いた。100個作ると数字を決めてから始めたので、他のテーマと比べると幾分か長引いてしまった。スプライン使ったあれこれは今後も続けるとして、このシリーズとしては一旦終えるつもりだけれど、mosktchとは何だったのかを一度振り返っておきたい。


きっかけ

2015年頃、仕事で提案した手法の1つが原型となった。X-Particlesの軌跡をスプライン化して、Sketch&Toonでレンダリングしたのが最初だったと思う。線のみにS&Tを用いた見た目が新鮮で、かつ想像以上に醸し出される手描き感に感動したのを覚えている。

一方で案件自体は途中からぱったりと音沙汰がなくなった上、気付けば別の布陣で完成・公開されており、その悔しさと手法への感動が入り混じって忘れられず、4年後の2019年に掘り起こすに至る。


量と質

一番最初はトキワブルーに憧れて、あとは最近出会ったオタクギョタク、岡崎さんのMatches, Beeple氏のEverydaysなどなど… 日々様々な形で量産もしくは継続する方々の背中を見るにつけ、漠然と一度まとまった量を作ってみる体験がしたかった。でも自分じゃ一晩で100は無理だし、1週間でも厳しいので3ヶ月位かな。。と思っていたが結局3年以上かかってしまった。一応ミニマムな量的達成はあったものの、短期集中でもなければコツコツ継続できてもいない状況で体験としての意義はあやしい。そして200, 300... を超えても淡々とその先へ進める人たちとの間の圧倒的距離を知る。


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テーマ

基本的に上で書いた以上の動機はなく、コンセプトなども皆無であったけど、続けているうちにいくつか意識するようになったテーマを3つ挙げてみる。


Ⅰ: 不完全さ

mosktchのアナログ感は全てノイズの組み合わせで醸成されており、つまりはデジタル表現の賜物なっている。筆圧のブレ、鉛筆の傾き、筆跡の歪み、撮影する紙やカメラの位置ズレ、黒鉛や紙のテクスチャ、さらに線のはみ出しや塗り残し、円を描くときの開始角度など、考えうる全てのレイヤーにそれっぽいノイズやランダムさを加えることでパッと見の「アナログ感」を作ろうと試みている。(気を配れば本来入り込まないような要因まで入れ込んで、ややアナログ感を過剰演出している節もある)

Substance Designerなどで作られるマテリアルはノイズ芸の最たるものだ。要素の全レイヤーに対して細かくチューニングを重ねた結果、見慣れたCG的ノイズの合算だったものが突然リアルにしか見えない瞬間が訪れる。それはたとえその構成要素を知っていても抗えない感覚で、その越境にずっと興味があるというか、計算機に対するロマンを見ている気がする。

過程で作ったスプライン操作のあれこれも、結局ほとんどは人間や自然物の不完全さを再現するためのもので、まとめ動画のタイトルを「Imperfections」にしようかと思ったくらい、全体で共通のテーマになっている。(後付けでかっこつけるのも小癪なのでやめた)


Ⅱ: 線

ほぼ認識上の概念である線という存在が、折れたり膨らんだり分裂したりと、実体や物性を持つだけで面白いな、という動機だけでいくつかは作った。でもそう短絡的に済む話ではない気がするし、全然掘り足りないので継続してやっていきたい。線が伸びると気持ちいい、とかは自分のモーション原体験な気がするけど、それもまだ上手く説明できない。


Ⅲ: 小手先頼り

自分の知識や技術力が上がる一方で、グラフィックや映像の表現力は年々落ちている実感が開始の時点で既にあったので、このシリーズには「小手先でたくさん作る」という目論見もあった。手法そのものは最初の数作でほぼ完成していたし、あとは形や動きを試行錯誤し続けることに集中できると踏んでいたのだけど、この点は見事に失敗に終わった。

たまに意識的に表現のみに振ろうとするも、基本的な動機がどうしても仕組みづくりに偏ってしまう。いざまとまった手法ができても使い回すことに謎の罪悪感が芽生えてしまい、ひどいときには毎回小さな新規プラグインを作っては疲弊し、雑に最後ちょろっと使うような状況に陥ってしまった。


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皮肉にも、技術的には想像もしていなかったブレイクスルーが何度かあったし、小さなパズルを解き続けたことで仕組みづくりは随分早くなった気がする。本気で表現と向き合うにはもっと極端な割り切りが必要そうだけれど、いい加減自分の変えがたい性質と折り合いをつけていくべきとも思う。

そしてこれだけ手描き風ルックを続けたが、どちらかというと自分は素直にデジタルの特性 (完璧な直線や曲線、ムラのない塗り、完全に均一なコマ補間など) を活かした表現が好きで、途中からこのデジタルでアナログを模し続ける不毛な行為に何とも言えないもどかしさを覚えるようになった。結局どこまで行っても手描きには敵わないし、なぜ滑らかに破綻なく作ったスプラインの挙動を8fpsに落とした上でガタガタとノイズまで加えなければならないのか... と憤りすら覚えることもあった。自業自得というほかない。

今のところ自己紹介がてらにさっと見せられるinstagramアカウントがこれしかなく、初対面で「(あっ) 謎のアナログ風アニメーション作家(もどき)ね」という分類の避けられない状況を今年は何とかしたい。CGをがんばります。